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朝日新聞 2008年8月4日 鷲田清一さんに政治学者苅部直さんが聞く、より抜粋




鷲田「結論が出なくてもいい、出ないまま、それでも決定しなければならないのが私たちの社会生活だとすると、それをしばらく延期するところがあってもいい。気が晴れない、もやもやしている。そういう時代に人は「わかりたい」って思うんだけど、「わかった」っていうカタルシスを求めてしまうと、問題設定も歪んでしまう」

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鷲田「僕はよく「思考には溜めがいるんですよ」って言うんですが、ある人に「じゃあ溜めをつくるにはどうしたらいいのか」と聞かれました(笑い)。
苅部「「実用」志向ですね。
鷲田「溜めをつくろう」というのは、そういう問い方はやめましょうということなんです。でも、わからないことに耐えられない。すべてが説明できるとは限らないという苦痛をヒリヒリと感じ、息を詰めていないといけないということもあるんです。わからないことへの感受性をどう持ちつづけるか。
僕らが生きている時代って「時を駆る」でしょ。あらかじめやっておくとか、先を読むとか。先に先に、という思考法です。でも、答えを急いで出さず、問いを最後まで引き受ける。じっくり考えたり、寝かせたり。すぐにわかろうとしないで、機が熟すのをじっと待つ。それも大切じゃないでしょうか。